創業約100年。2022年にリニューアルしました / 登る人も登らない人も楽しめる山小屋 / 冷泉小屋の味わい方
食で心身の回復を / 自然のリズムに身をゆだねる / “Less is More”を体感する
ビギナーさんもベテランさんも、お気軽に / 一度は走ってみたいヒルクライムの聖地
冷泉小屋のエネルギーマネジメント / 水は、冷泉をフル活用 / 熱源は、LPガスと…… / 標高2,100mで享受する太陽の恵みで自家発電
マイカー規制があります / 徒歩・自転車・バスがおすすめです
はじめまして、冷泉小屋オーナーの村田淳一です。私たち冷泉小屋は、長野県と岐阜県にまたがる乗鞍岳にある山小屋で、その名前はすぐ脇に流れている“温泉”ならぬ硫黄冷泉に由来しています。昭和6年(1931)に創業後、16年間のクローズ期間を経て、2022年7月に新生冷泉小屋としてリニューアルオープンしました。現在の山小屋で個人所有の小屋は、国立公園法ができる前に建てられたものが多く、新たに建てるには法制上かなり難儀です。そのため、権利が公に出ることが少なく、ほぼ世襲で継がれてきているのが現状です。しかし、それでは後継者がいない山小屋も出ることとなり、前オーナーの筒木東洋男さんは権利の譲渡先をオープンに探していました。そんな筒木さんに偶然ある仕事を通じて出会い、「冷泉小屋を続けてほしい」という思いに動かされ、林野庁や環境省との難しい交渉ののち、あまり前例のない「山小屋移譲」を叶えることとなりました。
山小屋とは、登山者の宿泊や休憩、時に緊急避難のために山の中に建てられた小屋です。つまり、基本的には山に登らなければ辿り着けません。でも、登山は持ち物が限られるし、そもそも足腰が丈夫じゃないと登れないし、ともなると限られた人しか行けないという話になってしまう。ところが乗鞍岳は3,026mという標高がありながら頂上近くまで道路が通っていて、冷泉小屋まではバスでお越しいただけます。冷泉小屋は標高2,100mに位置するので、天気が良ければ朝日が昇るころ眼下に雲海が広がっていたり、夜も天を仰げばくらくらするほどの一面の星空に出会えます。これは山に登らないとなかなか見れない景色です。道路があるからロードバイクも楽しめるし、ようは乗鞍岳はなかなかに遊びがいのある山なんです。私はもともと、登山や世界中の川でカヌーを楽しむようなアウトドア愛好家です。それゆえに、“道路の走っている山”という特徴に対してあまり魅力を感じていなかったことが正直なところありました。しかし複眼的に考えたとき、この山のバラエティに富む側面に気づき、冷泉小屋を「登る人も登らない人も楽しめる山小屋」として親しんでもらおうと考えるにいたったのです。
冷泉小屋には、電気やガスといった公共インフラが通っていません。国立公園の中なので、排気ガスによる環境破壊を防ぐためのマイカー規制もあり、自家用車でのご来場もできません(バスがあります)。だから、私たちはテクノロジーとアイデアを駆使して、自然のリズムを味わいながらも居心地良く過ごせる工夫を施しています。
室内のデザインも建築チームのおかげで北欧調の素敵な雰囲気に仕上がっていますが、あくまでもここはホテルではなく山小屋です。ご来場の方には、いくつかご理解いただくことでより安心してお過ごしいただけるポイントがあります。この「Reisen story」では、そんな冷泉小屋の特徴やその背景をお伝えできればと思っています。
乗鞍からの便りを読むような気持ちで、お読みいただければうれしく思います。
冷泉小屋オーナー村田淳一
※冷泉小屋のリニューアルに関する詳細なアーカイブは、noteに記録が残っています。よろしければぜひご覧ください。https://note.com/reisen0000/